シャンソンな午後

相方が夕方からシャルル・アズナブールのコンサートに行くというので
午後から部屋で、シャンソンのCDをかけてみた。
以前ふたりの記念日に、相方の俳句の師匠がアズナブールの
『BON ANNIVERSAIRE』という曲の歌詞を贈ってくれたことがあって
それがとても素敵な詩だったことを思い出し、その曲を久しぶりに聴いた。

『BON ANNIVERSAIRE』  
Charles Aznavour

かなり前から 僕はもう 新調の背広を身につけて
キューキューの靴を足に履き 準備がすっかり出来ている
今夜は大事な夜なんだ 何故って今日は記念日だ
幸せがお前に白い花嫁の衣装を着せてくれた日だ
ところがお前はイライラで 癇癪爆発寸前だ
口をきかぬが僕の得策 用心するに越したことはない
一言なりと口きけば お前の困った性分で
放っておいてと言うだろう そして時間が無駄になる
今はもう八時十五分 それでもお前は待っている
今朝には届いているはずの お前のドレスの届くのを
おまけにお前の髪ときたら 一向に櫛が通らない
よってたかって我々が 遅刻するように共謀か
こんな調子で行ったらば 話題の作家の演劇を
見に行く予定もすっかりおじゃん
作者はアヌイかサルトルか 僕は詳しく知らないが
残念ながらおさらばだ
兎に角僕には安楽な椅子があるから結構だ
よき記念日だよ よき記念日だ

やっとお前のドレスが着いて どうやらお前も元気づく
兎に角時間を稼ごうと 僕はお前の手伝いに全力あげて大わらわ
やれやれやっと出来たかと 思った途端に最悪の事態発生
服のチャックが真ん中で 止まってさっぱり動かない
二人で力を合わせあい 押したり引いたりお互いの指を絡ませたけれど
あんまり力を入れ過ぎて ビリビリ布が裂けちゃった
お前の希望はペシャンコになって 涙に早変わり
それでもおよそ十一時 やっとお支度完了だ
でも劇場に着いた頃 芝居は跳ねてしまってる
「おいで 行こうよ 二人で一緒にごはんを食べようよ」
「いいえ わたしは胸がいっぱい 帰った方がよい」と言う
二人黙ってゆっくりと街を歩けば 微笑むお前 
僕はお前を抱きしめる そしてもう一度 微笑むお前
今夜の予定は目茶目茶でも 何と二人は幸せだ
だって愛しているのだもの 何より強いは愛情だ
よき記念日だよ よき記念日だ
よき記念日だ

まるで小さなお芝居を見てるみたい。
シャンソンはみんな同じにきこえる私の耳ですが、歌詞が分かるととても味わい深いものですなあ。
(まーこの歌で一番の共感ポイントは、服のチャックが上がらなくて
ドレスがビリビリってとこなんだけどね(^^;でも最後ちょっと泣けるっす)
「なんで私も誘ってくれなかったのよ〜」
「え?だってキミ、シャンソン聴かないじゃん!!」(←ごもっとも)。
そんなやりとりをして、相方を送り出した。
アズナブールは82歳。一度も休まず90分歌いっぱなしで、声もすばらしかったそうだ。
すごいねえ。恋もバリバリ現役なんだろうなー。フランス人だもんなー。