ウン十年ぶりの再会?

実を言うと、私が生まれて初めて映画館で見た映画はエルビスものだった。それが『エルビス・オン・ステージ』だったのか『エルビス・オン・ツアー』だったのか、定かではないんだけれど。たぶん当時私は園児で、高校生だった双子の従姉(エルビス狂)と渋谷の遊園地(当時デパートの屋上にあった)に行くつもりだったのが、映画の看板をみつけた従姉たちが、急遽予定を変更。“◯◯ちゃん、映画見たい?”“え?映画ってなあに?”ってな感じで、映画館に連れてゆかれたのだ。それでも一時間半くらいおとなしく座ってたってことは、園児なりに面白かったか、金縛りにあってたか、どっちかだと思う。そして、生まれて初めて見た映画の唯一の印象は、
“こんなにモテモテな男の人の奥さんはたいへんだな・・・”
ってことだった。


劇場に入ると、おばちゃんたち・・・というより、おじいさんおばあさんが並んでいてまずビックリ。相方と“エルビスって生きてたら何歳?”“うーん、70歳くらいじゃないの?”とか会話していたら、そばにいたおばあちゃんが、ものすごーく何か言いたげな顔でこっちを見ていた。ああ、みんなエルビスが青春だったんだね。トイレの行列では“膝が痛むから和式トイレは使えないの”というおばさまに和式トイレを譲られる、そんな客層。場内の灯りが落ちただけで、ぱらぱらと拍手が起こり、彼女たちの期待感がうかがえる。
で、映画なんですが。エルビスってお茶目な人なのねー。という部分と、ショーを作り上げるまでの緊張感と、再起に賭けるエルビスのサービス精神とが、いまならわかります(園児にはわからん)。当時のエルビスはすでにちょっぴりふくよかで、カラダの動きも決してシャープではないけれど、甘いボイスで繰り出される名曲たちに、おばあちゃんたちも私もノリノリ!失神しかかってるような女性ファンに平等に、惜しげもなくキスしてまわるエルビス。園児はそんな様子を見て“この人の奥さんはたいへんだ”と思ったにちがいない。映画が終わると、再び拍手が。やっぱ映画館っていいな。
見終わって、昔私が見たのはこれじゃないかもー?と思った。なんかもっと女性ファンがエルビスめがけて走ってたような気がするんだよなー。それと、個人的にステージ上のアクションが派手でキメポーズの多いミュージシャンに萌えがちなのは、エルビス映画のトラウマなのかも・・・と遅ればせながら気づいた。今度はDVDで『エルビス・オン・ツアー』を見て、記憶の断片を確かめたい。
電車の中で、ずーーっとエルビス話をしながら、帰った。