笑う茶碗

南伸坊さんがタウン誌に連載しているエッセイをまとめたもの。ネタは夫婦のなんてことない日常で、タイトルも夫婦茶碗にちなんで、笑う茶碗。シンボーさんの目を通して描かれた奥さんはたいそうかわいくて面白いひと。夫婦でいつも同じものを面白がり、仲良く暮らしてるさまがなんとも言えず“ごちそうさま”な一冊だ。たとえばこんな感じ。

「シンちゃん、今日いそがしいかなァ」
と、ツマが言った。こういうことをツマ・文子が言うときは、たいがい面白い企画を思いついた時だから、私は、
「大丈夫忙しくない」
と必ず言う。
ヒマじゃなくても、企画に乗っちゃったほうが断然面白い。
「シンちゃん、今いそがしいかなァ?」
と、おつかいに出ていたツマから電話があった。もう十年くらい前のことだ。その時直感が働いて、私は30分後〆切の仕事をパタリとやめた。
「え?大丈夫。いそがしくない」
「じゃあねぇ、今すぐ階下に来てくれる?隣のビルの入口ンとこにいる」
私はすぐにルス電にして、カギをかけて階下におり、隣のビルの入口まで走っていった。
「今ねェ、ものすごくデッカイ虹が出てる。コッチの方角だから、ここんちの屋上にのぼろう!!」

きゃー。セカチューみたいー。あとがきでシンボーさんはこの連載を自ら「ツマへの感謝の手紙」と評しているけれど、なんのこれはラブレターですよ。楽しそうでいいけどさ、読んでてときどきアホらしくなるわ(^_^:。ちなみにこれ、相方の書棚から発掘したんだけどさ、相方はこれをいったいどういう気持ちで読んでおるのやら。

笑う茶碗

笑う茶碗