初めてのモッズスーツ

大阪のライブばかRくんが、野暮用で東京へ来たついでにモッズスーツを仕立てたいと言う。モッズスーツといえばココ!ってくらい有名なテーラーが世田谷の梅ヶ丘にあって、そこに行きたいんだと言う。ネットでちらっと検索したら、ミッシェルとかスカパラの皆さんもそこでスーツを仕立てたんだとか。それはちょっと行ってみたいかも。
というわけで、仕事早めに切り上げて、Rくんと梅ヶ丘に行きましたよ。駅おりてすぐ、目の前にばばーんと“モッズスーツ作ります”って書いてあるきれいなテーラーが。名前はナミキ。ギターが飾ってあって、ビートルズの写真が貼ってある。おおっ、いきなりここかしら?と思ったら「ちゃうちゃう」とRくん。どうやら梅ヶ丘には同じナミキという名前のテーラーが二軒あって、どっちもモッズスーツがウリらしい。へー。まぎらわしい。
で。信号渡ってほんのちょっと先に行くと、現れましたよ。もう一軒の並木が!いきなりのユニオンジャック。そして色あせたミッシェルのポスター。ぺたぺた貼られた写真の中には、満面の笑みでモッズスーツを着たスマイリー菊地がっ。

おそるおそる中に入ると、とてもきれいな駅前の店とはうってかわって、布地の山、山、山。スタイルブックって書かれた写真帳には、売れないバンド風の男の子たちが個性的なスーツでうれしそおにポーズを決めてる。布地の山の向こうでは、モッズ風青年が採寸のまっさいちゅう。カウンターにいるのは腕を包帯でつったおばちゃんと、とてもモッズにこだわりがあるとは思えないおじちゃんだ。つるしてあるのは派手なスーツばっか。衿だけ豹柄とか、赤いつめえりとかね。布とスーツのすきまにつるしてあるのは、いろんなライブのポスター。これじゃまるでレコ屋だよ(^^;

Rくんが関西弁で「スーツ作りたいんですけどー」って言うと、まずは布地を選べと言う。
えっ。この山の中から?(^^;
布を選んで、さらにボタンの数、衿の細さ、裏地、などなどを選ぶ。ポケットの傾斜角度も選べるのね。思いっきり斜めでお願いしますよ。で、いよいよ採寸です。
って言っても、ちょちょっと計ってスグ、Rくんにぴったりサイズのパンツを持ってきた。
「これはいてみて」
おおっ。ぴったり。手足がやたら細くて長いRくん、モッズスーツのお手本みたいなめちゃ細身のパンツがピッタリサイズだよ。とにかくカラダにぴったりの細身のスーツにしたいというRくんに
「一生座らないんなら、これより細くしてもいいよ」と、オヤジ。
一生、座らない…かぁ。するとオヤジ、真面目な顔して
「モッズは、座っちゃいけないんだよ」
でも、デスクワークだからなー…とRくん。
「えっ。これ着て仕事行くの?」オヤジ絶句。
ジャケットの丈も
「お辞儀しないなら、これより短くしてもいいけど…」
お辞儀、しません!Rくん即答。アタマをさげないサラリーマンか。えらいぞ。
上着の内側に無料で刺繍を入れてくれるというので見本をパラパラめくる。バンド名とパートと名前とか入れてる人いるのねー。それ楽しそう。追加料金でターゲットマークも入れられるし、心意気があれば“君が代”全歌詞も入れられるらしい。すげー。そんな心意気はない。
ボタンホールの色も好きに変えられるし、オーダーって楽しいね。
あれこれ指定して、できあがりを大阪まで送る宅配料も込みで45000円ナリ。これはお値打ちではないですか。
駅前のナミキとは関係ないんですか?とよそのお客さんの問いに
「江戸時代に分かれたんですよ〜」とオヤジ。
江戸時代にモッズスーツかよっ。
「ウソです。まったく関係ないっす」
オヤジいいキャラだ。
散らかりすぎた店内といい、オヤジのキャラといい、ゴルエーがこの店でスーツ作ったと聞いたら納得できるんだけど、ミッシェルやスカパラの皆さんがこの試着室で採寸したとはとても思えないよ。やっぱり彼らがスーツを作ったのは駅前の綺麗なほうのナミキなのかな。
ちなみに、駅前のナミキのほうにはきれいな色紙がずらっと飾ってあるのが遠くから見えたが、唯一わかったのは“鳥肌実”の色紙だった。
そしてこちらの並木のカウンターの向こうにはスクービードゥーのサイン。
まあ、どっちもどっちだけどね(^^;。私はこっちの並木を支持するよ。
Rくんのスーツの仕上がりがめっちゃ楽しみっす。